プレスリリース下書きを AI で 30 分に短縮|広報の文体テンプレ実物公開
新サービス発表のプレスリリース、白紙の Word を前に手が止まる。書き出しを 5 回直し、過去発表との整合性を確認し、配信媒体ごとに文体を調整する。気がつけば 5 時間が消えている。あなたも同じ経験を繰り返していませんか。
プレスリリースは広報業務の中で最も「時間がかかる割に頻度が高い」業務です。月 1〜3 本ペースで発生し、1 本に 4〜5 時間かかる。年間で 60〜180 時間が PR 作成に消える計算で、これが多くの中小企業の現場の実態です。
年商 50 億規模の事業会社で広報マーケを 1 人で担当している筆者は、Claude Code に下書きさせる仕組みを作って、プレスリリース 1 本の所要時間を 5 時間 → 30 分に短縮しました。本記事は文体テンプレ・過去 PR 学習方法・実物プロンプトを全部公開する手順書です。
本記事はAI 内製スタックの全貌で示した「広報マーケが AI に任せる業務 10 連発」の 3 番目の業務、プレスリリース下書きを単独で深掘りした続編に位置します。
目次
プレスリリース AI 委任で月 12 時間 → 1.5 時間にする仕組み
プレスリリース AI 委任とは
過去のプレスリリースを Claude Code に学習させ、新規発表内容と文体テンプレを渡すと、自社らしい文体の下書きが出力される仕組みです。人間は事実関係のチェックと数値の精査だけ担当し、文章を 0 から書く作業を AI に置き換える分業設計を指します。
広報マーケ 1 人運用の筆者は、Claude Code にプレスリリース下書きを書かせて月 3 本×5 時間 = 15 時間を 1.5 時間に短縮しました。任せられるのは「定期発表」「サービス改修」「キャンペーン告知」の 3 タイプ。任せない方が良いのは「謝罪・お詫び」「IR 開示」「社長交代発表」などのセンシティブ案件です。
この章では、AI に任せて成立する範囲と、人間が必ず残すべき役割を整理します。
AI に任せられる 4 タスク
第 1 に、過去 PR を学習した上での文体再現。第 2 に、リード文(最初の 200 字)の自動生成。第 3 に、本文の論理構成(背景 → 課題 → 解決策 → 効果 → 今後の展望)の組み立て。第 4 に、配信媒体ごとの文字数調整。これら 4 つは AI が安定して 80 点を出す領域です。
人間が残すべき役割
事実関係の精査、数値の検証、引用許可の確認、配信タイミングの判断。この 4 つは人間が必ず担当します。AI は「もっともらしい数値」を生成する性質があるため、PR に載せる数字は社内データベースで全件照合する手順を運用に組み込んでください。あなたの会社が上場企業の場合、IR 開示の整合性チェックも人間の領域として残します。
Before|手作業の PR 作成が時間を奪う 3 つの構造
プレスリリース 1 本に 5 時間かかる原因は、書く速度の問題ではありません。3 つの構造的な理由が積み重なっています。皆さんの広報業務でも、似た時間配分になっていないか確認してみてください。
構造 1|文体の試行錯誤に 1.5 時間
「うちの文体はこうじゃないかも」と書いては消す作業が最も時間を奪います。プレスリリースは広報の顔。1 文の言い回しに 30 分悩むことが珍しくありません。広報担当者の暗黙知に依存しているため、新人が書くとさらに倍以上かかります。
構造 2|過去発表との整合性チェックに 1 時間
「前回は『業界初』と書いたけど、今回も使っていいか」「数値の表現は前回と統一されているか」を過去 PR と照合する作業に 1 時間。社内 PR アーカイブを横断検索しながら整合性を取るプロセスが必要で、ここに時間が消えます。
構造 3|配信前の社内承認ループに 1.5 時間
下書きが完成してから、上長レビュー → 法務確認 → 経営層承認 → 修正反映 → 再レビュー、というループに 1.5 時間。1 ラウンドの承認なら 30 分で済むケースもありますが、修正が入ると往復が発生し、合計 1.5 時間に膨らむ構造です。
3 つの構造を合計すると、1 本のプレスリリースに 1.5 時間(文体)+ 1 時間(整合性)+ 1.5 時間(承認ループ)+ 1 時間(実作業)= 5 時間が消えます。月 3 本なら月 15 時間。年間 180 時間という規模感です。
After|過去 PR 学習 + 文体テンプレ + 実物プロンプトの 3 段階
ここから具体的な実装手順に入ります。3 段階のセットアップを終えると、PR 1 本の下書き作成が 30 分で完結する仕組みが回り始めます。
STEP 1|過去 PR を 5 本 Claude Code に学習させる
自社の過去プレスリリースから 5 本を選び、`samples/press-releases/` ディレクトリに配置します。選ぶ 5 本の基準は「定期発表」「サービス改修」「キャンペーン告知」「謝罪文(学ばせる)」「ポジティブ実績発表」の 5 タイプを 1 本ずつ。バリエーションを揃えると、新規パターンへの対応力が上がります。
5 本程度で十分。10 本以上入れても精度向上は頭打ちになり、Claude Code の context が圧迫されるだけです。
STEP 2|文体テンプレを CLAUDE.md に登録
プロジェクトルートの CLAUDE.md に、プレスリリース固有の文体ルールを記述します。
# プレスリリース文体ルール
## 構造
1. リード(200 字以内・5W1H 圧縮)
2. 背景(業界課題・自社の問題意識)
3. 解決策(新サービス / 新機能 / キャンペーン内容)
4. 期待効果(数値ベース・推定値は「見込み」と明記)
5. 会社概要(定型文)
6. 問い合わせ先
## 禁止表現
- 「業界初」(裏取りなしでは使わない)
- 「画期的」「革新的」(中身が無い)
- 「お客様の課題に寄り添う」(具体性なし)
## 推奨表現
- 数値で語る(「3 倍」「30% 削減」)
- 課題 → 解決策の順で並べる
- 過去 PR の文体を再現する
STEP 3|実物プロンプト
新規 PR が必要になったら、Claude Code に以下のプロンプトを投げるだけ。
以下の発表内容で、当社のプレスリリース下書きを書いてください。
# 発表内容
- 発表対象: {サービス名 or キャンペーン名}
- 発表のキー: {3 行で概要}
- 数値: {実測値 or 推定値、どちらか明記}
- ターゲット: {対象顧客像}
- 配信予定日: {YYYY-MM-DD}
# 制約
- samples/press-releases/ の文体を再現
- CLAUDE.md のプレスリリース文体ルールを厳守
- 800 字以内
- リードは 200 字以内に圧縮
- 数値の出典が無い場合は「(自社推定)」と明記
このプロンプトで 5 分以内に下書きが返ってきます。あとは事実関係チェックと数値精査に 25 分。合計 30 分で 1 本完成。CLAUDE.md でルールを覚えさせる仕組みを一度組めば、書くたびに同じ文体で量産できます。
出典: Uravation「中小企業の生成 AI 導入成功事例 5 選」(2026)
ハマりポイント 3 つと回避策|数値架空・矛盾・媒体最適化
3 ヶ月運用すると見えてくる定番のハマりどころが 3 つあります。先に知っておけば回避できる落とし穴です。
ハマり 1|数値の架空生成(ハルシネーション)
AI は「もっともらしい数値」を平気で書きます。「導入企業 100 社突破」と出力されても、実態は 87 社という可能性が残る。「業界シェア 23%」と書かれても、出典が無い数値の混入リスクが常にある。送信前にこれを見逃すと、訴訟リスクや信頼失墜につながる事故になります。
回避策は、数値が出てくる文ごとに「出典は何か」を AI に明示させること。STEP 3 のプロンプトで「出典が無い場合は『(自社推定)』と明記」と指示しているのはこのため。出典付きの数値だけ最終版に残し、出典不明の数値は社内データで照合してから載せる手順を運用に組み込んでください。
ハマり 2|過去 PR と矛盾する表現
「業界初」と前回書いたサービスを、今回別の機能で「業界初」と再度書いてしまう矛盾。AI は過去 PR を学習しても、文脈の細かい一致までは追えません。
回避策は、配信前に過去 PR を Claude Code に「矛盾検出」プロンプトで再チェックさせること。「以下の新規 PR 案と、samples/press-releases/ の過去 PR で、矛盾する数値・表現があれば指摘してください」と投げるだけ。3 分で矛盾候補が出ます。
ハマり 3|配信媒体ごとの文体最適化忘れ
PR TIMES と @Press と日経電子版では、要求される文字数・構成が異なります。AI に「800 字で書いて」と指示するだけでは、媒体ごとの最適化が抜けます。
回避策は、配信媒体ごとの文字数・必須項目を CLAUDE.md に媒体別セクションで記述しておくこと。「PR TIMES 用は 600〜800 字、@Press 用は 1,200〜1,500 字、日経電子版用は 400〜600 字」のように媒体別ルールを明示します。
プレスリリース AI 自動化についてよくある質問
過去 PR を学習させるのに著作権の問題はありませんか
自社の過去プレスリリースを自社の AI ツールに学習させるのは、著作権法上問題ありません。プレスリリースの著作権は発信元企業に帰属するため、自社使用は自由です。一方、他社のプレスリリースをサンプルとして学ばせる場合は、引用の範疇を超えると著作権侵害になり得るため、推奨しません。自社の過去 PR だけで十分な精度が出るので、他社サンプルは不要です。
PR TIMES や @Press との連携は可能ですか
API 連携は技術的に可能ですが、初期は手動で本文をコピーペーストする運用を推奨します。連携自動化は、3 ヶ月の手動運用でハマりどころを把握してから組むのが安全です。早すぎる自動化は、媒体ごとの文体最適化や承認ループの確認を飛ばしてしまうリスクがあります。
上場企業でも使えますか
使えますが、IR 開示が絡む案件(決算発表、業績修正、M&A、社長交代など)は AI に任せず、IR 担当者と法務が手動で書く運用を推奨します。これらは適時開示規則・金商法の対象で、表現一つで株価や訴訟リスクに直結します。一般的な新サービス発表・キャンペーン告知では、AI で問題ありません。
外注の PR 代行と比較してコストはどうですか
外注は 1 本 5〜15 万円が相場。月 3 本配信なら年 180〜540 万円。AI 内製は Claude Code のサブスク代だけなので年 12 万円程度。コスト差は約 15〜45 倍です。ただし配信代行・媒体リレーション構築は AI で代替できないため、配信フェーズだけ外注を残すハイブリッド運用が現実的です。書く時間を AI で削減し、関係構築の時間を人間が確保する分業設計を推奨します。
