広報マーケ 1 人で組んだ AI 内製スタック|KAIROS/SIGNAL/LUMEN/n8n 全公開

広報マーケ 1 人で組んだ AI 内製スタックのイメージビジュアル

広報マーケ部門に AI を 5 つ並走させて、それを 1 人で運用している組織を見たことがありますか。

年商 50 億規模の事業会社で、私は今その状態を作っています。プロジェクトは 5 つ。KAIROS(記事生成)/ SIGNAL(SNS レポート)/ LUMEN(スライド)/ FORMA(Web)/ n8n(業務自動化)。月の運用時間は 7〜10 時間で収まっています。

ただし、これは魔法ではありません。各プロジェクトの責務を切り、CLAUDE.md でルールを集約し、90 点で出して回す——4 つの設計原則を守った結果、はじめて 1 人運用が成立します。原則を破ると、5 プロジェクト同時に止まる。私自身、Level 4 までは試行錯誤の連続でした。

本記事は、その内側を全公開する記事です。前編の広報内製化 5 段階の地図で示した Level 5 の中身、すなわち「実物として何が動いているか」を、入力・処理・出力・運用時間の 4 軸で開示します。

1 人運用が成立する 4 つの設計原則|なぜ 5 プロジェクトが止まらないか

AI 内製スタックとは

複数の AI プロジェクトを連携させて 1 人や少人数で運用する仕組みです。各プロジェクトの責務を切り分けたうえで、CLAUDE.md などのルールファイルでエージェントに業務知識を学習させ、人間の判断と AI の作業を分業する設計を指します。

年商 50 億規模の事業会社で、広報マーケ部門の私は AI 内製スタックを 5 プロジェクト並走させ、月 7〜10 時間で運用しています。プロジェクトは KAIROS(記事生成)/ SIGNAL(SNS レポート)/ LUMEN(スライド)/ FORMA(Web)/ n8n(業務自動化)。これを支えているのが、4 つの設計原則です。

原則を 1 つ破ると、5 プロジェクト同時に止まります。「どれか 1 つを完璧にしたら他に手が回らない」という属人化の罠が、最も多い失敗パターン。次の 4 原則は、その罠を避けるための具体的な分業設計です。

原則 1|プロジェクト間で責務を切る

1 つのリポジトリに全機能を詰め込む設計は、3 ヶ月で破綻します。KAIROS は記事生成だけ、FORMA は Web だけ、SIGNAL は SNS レポートだけ。境界線をディレクトリレベルで引き、互いに侵食しないことを CLAUDE.md で明示する設計に切り替えました。

結果、ある日 KAIROS の validator を改修しても、SIGNAL の自動化フローには一切影響しません。1 プロジェクトの修正が他プロジェクトに波及しない——これが「責務を切る」の実態です。

原則 2|CLAUDE.md にルールを集約してエージェントに読ませる

ルールはコードに書かない。Markdown で残し、AI が読み返せる形にする。これが 2 つ目の原則です。たとえば禁止表現リストは data/brand_forbidden_words.json を正本とし、validator がそのまま読み込みます。新しい禁止語を追加するたびにコードを書き換える必要はありません。

同じ思想で、執筆ルールは agents/wordpress_writer/CLAUDE.md、画像生成ルールは visual-generator/CLAUDE.md に分離。Claude Code がセッション開始時にこれらを読み込めば、人間の口頭指示なしに作業基準が伝わります。

原則 3|90 点で出して PDCA、磨き込まない

100 点の完成品を 1 つ出すより、90 点で 10 個出して改善する。広報マーケ 1 人運用では、完璧主義は時間の浪費です。既存 16 記事も最初から完璧ではありません。validator が WARN として残している項目を、月 1 回まとめて修正するスタイルに切り替えました。

結果、記事 1 本あたりの執筆時間は 30〜50 分に収まります。完璧を狙うと 1 本 3 時間以上。スループットが 4 倍違う、というのが実感です。

原則 4|失敗ログを残し、次セッションが学習する状態に

失敗は隠さない。docs/logs/YYYY-MM-DD.md に「やったこと / つまずいたこと / 原因と解決策 / 次回の再開ポイント」の 7 項目で残します。次セッションの Claude Code がそれを読み、同じ失敗を繰り返さない仕組みです。

たとえば、ある記事で実在しない slash command を「公開済みコマンド」として記載してしまった事故がありました。その日のうちに validator に「実在性検証」の ERROR を追加し、再発を物理的に止めました。失敗を残すからこそ、次の改善が走ります。

KAIROS(記事生成)|入力・処理・出力・運用時間の全数字

あなたが今読んでいるこの記事も、KAIROS が組み上げた 1 本です。1 本あたり何が入って、何が出て、どれだけの時間がかかっているか。実物の数字を全部公開します。

入力|キーワード + 既存記事の文体 + 競合分析

入力は 4 つだけ。テーマキーワード、既存 16 本の文体・構造、ターゲット読者像(data/client-personas.md)、競合分析(data/competitors.md)。Claude Code がセッション開始時にこれらを読み込み、ブランドトーンと差別化軸を理解した状態から執筆に入ります。

口頭での指示は最小限。「〇〇のテーマで書いて」と一言投げるだけで、文体・構造・出典ルールが全て揃った状態で 1 本が出てきます。

処理|Phase A〜E + KVG(visual-generator)

処理は 2 段階です。前半は Phase A〜E の思考プロセス。市場調査(A)→ 読者像(B)→ 構成設計(C)→ 執筆(D)→ セルフチェック(E)の順で、構成案を組み上げてから本文を書きます。後半が KVG(KAIROS Visual Generator)。HTML を投入すると、画像生成・Yoast メタ自動付与・WordPress 予約投稿までを 1 コマンドで実行します。

validator が 14 ERROR + 8 WARNING を投稿前に自動チェック。禁止語・字数・H2 構造・FAQ・著者情報・schema 互換まで全て検証します。中小企業の AI 導入では、テクノロジー業種で 88%、製造業で 75% の成功率という調査結果も出ており、再現可能な仕組みであることが裏付けられています。

出典: note 上村菜穂「中小企業 業種別 AI 導入成功率ランキング 2026」(2026)

出力|Yoast 自動メタ + アイキャッチ + WP 予約投稿

出力は 1 本のコマンドで完結します。Yoast SEO のタイトル / 説明 / focus keyphrase が自動付与され、アイキャッチ画像(WebP 1200×675px)が生成され、WordPress に status=future で予約登録される。手作業は「コマンド入力」だけ。

予約スロットは 7:00 / 12:00 / 18:00 JST の 3 枠 × 7 日 = 週 21 枠。次の空きスロットへ自動配置されるので、1 日に複数本生成しても被りません。

運用時間|月 6〜10 時間(5,000 字 × 12 本)

1 本あたり 30〜50 分。テーマ調査と Phase A〜E の構成設計に 20 分、本文執筆に 15 分、セルフチェックと投稿に 5 分という配分です。月 12 本で 6〜10 時間。

外注比較で見ると差は明確。中小企業向け SEO 記事の単価は 1 本 5 万円が相場で、月 12 本なら 60 万円。年間 720 万円相当の外注費が、月 7,000〜1 万円のサブスク代で吸収できる計算です。試算値(筆者試算)ではありますが、ROI は実物の規模感として参考になるはずです。

SIGNAL(SNS レポート)|CSV 監視からスライド生成までの自動化

ご自身の組織で、月次 SNS レポートを作るのに何時間かけていますか。多くの広報マーケ担当が、ここで月 5〜10 時間を消耗しています。SIGNAL はその時間を 30 分にまで圧縮するプロジェクトです。

入力|Drive CSV 監視 + FB/IG API 日次取得

入力源は 2 系統。1 つ目は Google Drive の CSV ファイルを n8n が監視し、新規ファイルが置かれたら自動取り込み。2 つ目は Facebook / Instagram API を毎日 06:00 JST に叩いて、インプレッション・リーチ・エンゲージメントを Sheets に蓄積します。

担当者が手作業で「先月のデータをダウンロード」する必要はありません。データは毎日勝手に集まる仕組みに切り替えました。

処理|Claude API で月次分析

毎月 3 日 09:00 JST にトリガが走り、過去 30 日のデータを Claude API が月次集計します。前月比較・前年同月比較・ハイライト記事の特定(エンゲージメント上位 3 件)まで、自然言語で要約コメント付きで出力。

「数字の表」だけでなく、「なぜ伸びたか / 何が落ちたか」の解釈までセットで生成されるのが、AI を介在させる意味です。中小企業の請求書処理が月 40 時間から 8 時間に短縮された事例もあり、定型業務の AI 自動化は再現性が高い領域だと裏付けられています。

出典: Uravation「中小企業の生成 AI 導入成功事例 5 選」(2026)

出力|PPTX 10 スライド自動生成

出力は PPTX 10 スライド。表紙 / 概要サマリ / 数値推移グラフ / 月次ハイライト 3 件 / 改善提案 / 次月の重点テーマ。Figma テンプレートを下敷きにしているので、見栄えは外注クオリティを維持します。

生成された PPTX は Drive に自動保存され、共有リンクが Slack に通知される設計。担当者がやることは、上長に「届きました」と一言伝えるだけです。

運用時間|月 30 分(前は外注で月 5 万円)

レポート作成自体は 30 分以内。レビューと改善コメントの追加で +30 分、合計 1 時間以内に収まります。外注時代は月 5 万円。年間 60 万円が消えていました。内製化により、その 60 万円が浮きます。試算値(筆者試算)として、SIGNAL 単体で年間 60 万円のコスト削減効果。

LUMEN / FORMA / n8n|残り 3 プロジェクトの役割と運用時間

5 プロジェクトのうち、KAIROS と SIGNAL を見てきました。残り 3 つは、それぞれ全く別の領域を担当しています。

LUMEN(Figma ベース高品質スライド)

用途は提案書・ピッチ資料・採用ブランディング資料。Figma のデザインシステムを Claude Code が読み込み、章立てと主旨を投入すると、ブランドトーンに沿った PPTX が出力されます。

運用時間は 1 資料あたり 30 分。同等品質を外注すると 5〜10 万円。年間で資料を 12 本作るなら、60〜120 万円のコスト削減です。事業会社の経営層への定例報告にも、この LUMEN 経由のスライドを使っています。

FORMA(unleash-talent.com 全体運用)

FORMA は自社 HP の全体運用を担当します。WordPress テーマの修正、新規 LP の立ち上げ、URL 構造の整備、301 リダイレクトのマップ管理。CLAUDE.md でルールを覚えさせる仕組みで、毎回の口頭指示なしに作業基準が伝わる設計に切り替えました。

運用時間は月 1〜2 時間。Web 制作会社に外注すると月 10 万円〜の保守契約が必要な領域を、サブスク代だけでカバーしている形です。

n8n(業務自動化基盤)

n8n は API 連携と通知トリガの基盤。SNS 監視・異変検知・Slack 通知・Drive イベント発火を、ノーコードで繋ぎます。現在は Anthropic API のコスト管理のため運用を停止していますが、収益化フェーズで再開予定。

構築時のみ時間がかかり、稼働後の運用時間はほぼ 0 時間。これが「自動化基盤」の本質です。

あなたの会社のマーケ部門も、同じ人数規模ではないでしょうか。少人数の部門こそ、AI 内製スタックでレバレッジを利かせる余地が大きい。それが、5 プロジェクトを 1 人で運用している実体験からの結論です。

AI 内製スタックについてよくある質問

1 人で 5 プロジェクトを回せるのは特殊な能力ですか

能力ではなく設計です。プロジェクト間で責務を切り、CLAUDE.md でルールを集約し、90 点で回す——この 3 つが揃えば、1 人 5 プロジェクトは中堅企業の広報マーケ部門でも実現できます。中小企業の AI 導入成功率は製造業で 75%、金融で 83% という調査もあり、再現性のある仕組みだと裏付けられています。

全部 Claude Code でやっているのですか

いいえ、Claude Code は中核ですが他にも使い分けます。記事生成(KAIROS)と Web 修正(FORMA)は Claude Code、SNS レポート(SIGNAL)は n8n + Claude API、スライド(LUMEN)は Figma + Claude Code。各プロジェクトに最適なツールを当てて、AI 1 つに依存しない設計です。1 つのサービスが止まっても他が動く冗長性を確保しています。

月の運用コストはいくらですか

自社運用で月 7,000〜1 万円ほど。Claude Code のサブスク + Pexels API + WordPress + Figma で完結します。記事執筆を外注した場合の月 60 万円相当(1 本 5 万円 × 12 本・筆者試算)と比較すると、内製化の経済合理性は明らかです。サブスク代は外注 1 本ぶんの 1/100 に収まる規模感。

真似するとしたら、どこから始めるべきですか

KAIROS(記事生成)から始めることを推奨します。記事 1 本を AI で書く経験が、ルール集約(CLAUDE.md)と PDCA 設計の練習になります。SNS レポートやスライドは、記事執筆フローが回り始めてから着手する方が安全です。先に SIGNAL や LUMEN を組もうとすると、ルール設計が未熟なまま自動化だけ進んで属人化する罠にハマります。

岩崎 正宏UNLEASH TALENT 代表

大阪在住。映像制作・PR 戦略・SNS 運用・採用ブランディングを軸に、年商 50 億規模の飲食グループの広報マーケを兼任。KAIROS(記事生成)・SIGNAL(SNS レポート)・LUMEN(スライド生成)・FORMA(Web)・n8n(業務自動化)の 5 プロジェクトを 1 人で並行運用している。「企業の見せ方が招くブランドの消耗を防ぎ、現場の真価を一生の資産に変える」を信条に、中小企業の広報伴走を続ける。

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