Claude Code カスタム|CLAUDE.md でAIに会社のルールを覚えさせる|実物公開
Claude Code を初めて触った夜のこと。「会社案内の文章を書いて」と頼んだら、出てきたのは教科書みたいな当たり障りのない文。「うちのトーンと違う」と直しを入れる。次の日もまた同じ調子の文章が出る。
AI は前の会話を覚えていない。これは仕様です。けれど毎回ゼロから「うちはこういう会社で」「こういう言葉遣いで」と説明し直すのは、現実的ではありません。
その問題を一発で解く仕組みが、CLAUDE.md という小さなファイル。Claude Code が「会話を始める前に必ず読む説明書」のような存在で、ここに会社のルールを書いておけば、毎回の指示が劇的に短く、しかも精度が上がります。
本稿はシリーズ「Claude Code を自分専用に育てる」の第 1 回。実際に当社で運用している CLAUDE.md の中身を一部公開しながら、何を書けば AI が「会社の専属ライター」のように動き始めるのかを解説します。Claude Code 自体の入門は前回の入門編を参照ください。
目次
CLAUDE.md とは|AI に会社のルールを覚えさせる設計図

CLAUDE.md とは
Claude Code がプロジェクトを開いた瞬間、自動で読み込む「最初の説明書」。会社のトーン、禁止表現、業務ルール、よく使うコマンドなどを書いておくと、毎回の会話に自動で反映されるため、指示の手間が劇的に減ります。
会話のたびに「説明をやり直す」が消える仕組み
AI は前回の会話を覚えていません。これは ChatGPT も Claude も同じ仕様。けれど Claude Code は、プロジェクトを開いた瞬間に CLAUDE.md を読み込むため、「うちは飲食グループの広報担当で」「文章は標準語で」「絵文字は使わない」といった前提を毎回読み直してくれます。
つまり、ファイルに 1 度書いておけば、それは 会社の常識として AI に常駐する 状態になります。毎朝、新人スタッフに同じ会社案内を読み聞かせる必要が消える、と言えば伝わるでしょうか。
2 種類のスコープ|会社全体と案件ごと
CLAUDE.md は置き場所で 2 種類に分かれます。覚えておくのはこの 2 つだけで構いません。
- グローバル:
~/.claude/CLAUDE.mdに置く。あなた個人のすべての作業に共通するルール(自分の会社情報、コミュニケーションスタイル、開発の好み) - プロジェクト固有: 各プロジェクトのフォルダ直下に置く。その案件だけに必要なルール(ブランドトーン、業界専門用語、媒体別の文字数制限)
当社の場合、グローバルには「岩崎は大阪の映像制作会社代表で、標準語で書く、絵文字は使わない」と書いてあり、プロジェクト固有には「KAIROS は WordPress 記事生成基盤で、目標文字数は 5,000 字、CTA は入れない」と書いています。役割分担が明確だと、AI の動きも安定します。
「公式が推奨する書き方」がもう存在する
Anthropic 公式は /init コマンドで CLAUDE.md のひな型を自動生成できる仕組みを用意しており、コミュニティ側でも書き方のベストプラクティスが共有されつつあります。「自己流で書いても動くが、押さえるべきツボがある」という段階に来ています。
出典: Anthropic Claude Code Best Practices(2026)
何を書くべきか|実物公開・KAIROS の CLAUDE.md 構造

抽象論より具体例。当社の WordPress 記事生成プロジェクト「KAIROS」で運用している CLAUDE.md の構造を、実際のセクション名そのままで公開します。
当社の CLAUDE.md・実物の章立て
| 章 | 中身 |
|---|---|
| システム構成 | 使っている技術スタック、関連リポジトリ、設計ドキュメントの所在 |
| 最優先ルール | 収益 > 広報 > 教育 / 専門用語の翻訳必須 / SNS と note 同時生成禁止 など 5 行 |
| ブランドトーン | 「知的・格調・本質を突く・行動を促す」/ 断言する / 数字と事例で裏付ける |
| 禁止表現 | 価格煽り・FOMO・スラング・曖昧表現・浅い励まし(カテゴリ別の語リスト) |
| 品質ゲート | 投稿前の検証項目 13 個と警告 7 個(自動検証ツールと同期) |
| AI エージェント一覧 | 各エージェントの役割・状態・関連ファイル |
| 作業ログルール | タスク完了時に何を、どこに、どう記録するか(テンプレ付き) |
ポイントは 「書かれていなくても誰かが知っているルール」を全部明文化していること。社員教育で口頭伝承していた暗黙ルールを、AI 用に文字に起こす——イメージとしてはそんな作業です。
特に効くのは「禁止」と「優先順位」の宣言
あれもこれも「やっていい」と並べるより、「これだけはやるな」と宣言する方が、AI の判断は安定します。当社では禁止表現を 5 カテゴリに分け、各カテゴリ 5〜10 語の具体例を載せています。
もう一つの肝は優先順位の宣言。当社の場合「収益 > 広報 > 教育」と最初に書いてあるため、迷ったときに AI が自動で収益寄りの判断を選びます。判断軸を文字にしておくと、属人化していた経営判断が AI にも伝わるようになる、ということです。
実装ノウハウまで書く|「使い方セクション」の威力
当社の CLAUDE.md には「KVG(自作の画像生成ツール)の使い方」という章があり、画像生成と WordPress 投稿を一発で実行するコマンドが、オプション付きで丸ごと書かれています。
これを書いておくと、「記事を投稿して」と頼むだけで AI が正しいコマンドを正しいオプションで実行します。社内マニュアルとして PDF に整理していた手順書を CLAUDE.md に貼るだけ。AI が常に最新の手順で動くようになる、というイメージです。
やってはいけない 3 つのアンチパターン

書き方の失敗例も先に潰しておきます。Anthropic 公式と海外のコミュニティが指摘する「ありがちな間違い」のうち、特に効くものを 3 つ。
アンチパターン 1|コードスタイルを書かない
「インデントは 2 スペース」「セミコロン必須」のようなコードの書き方ルールを CLAUDE.md に入れる人が多い。Anthropic 公式はこれを 最もよくある間違い として警告しています。理由はシンプルで、コードスタイルの整形は専用ツール(リンター)の方が速く、安く、正確だからです。
出典: HumanLayer Blog: Writing a good CLAUDE.md(2025)
この原則は経営にも応用できます。あなたが AI に頼むべきは「判断が必要な仕事」、ツールに任せるべきは「機械的な作業」。混ぜると両方の品質が落ちます。
アンチパターン 2|長く書きすぎる
CLAUDE.md は読むたびに AI の「記憶領域」を消費します。これを コンテキスト窓 と呼びますが、満杯になると AI のパフォーマンスが落ちる仕様です。
目安は 200 行以内。ルールがそれ以上に膨らんだら、別ファイルに分けて参照させる構造にします。あなたの会社の CLAUDE.md が膨らみすぎたら「頻度の低い情報を別ファイルに逃がす」と考えてください。当社では data/brand-guidelines.md などに切り出しています。
アンチパターン 3|更新しない
一度書いたら永久に有効、という性質のファイルではありません。新しいエージェントを追加した、ブランドトーンを変えた、禁止表現を増やした——こうした変更があった時は CLAUDE.md も同時に更新します。
当社では「AI エージェントを 1 体追加するたびに必ず CLAUDE.md を更新して GitHub にコミットする」と CLAUDE.md 内に自己言及で書いています。ルールがルール自身を維持する構造、と言えるかもしれません。
今夜から書ける|最小構成テンプレ

「読んで分かったが、いざ書こうとすると手が止まる」という方へ。最低限これだけ書けば動き始める、というテンプレを置いておきます。
5 ブロックの最小テンプレ
初版に必要なのは、次の 5 つのブロックだけです。各ブロックを 30 秒で 3 行ずつ書けば、合計 5 〜 10 分で初稿ができます。
- 私について: 役職・立場・知識レベル / 主な業務を 3 行で
- プロジェクトの目的: 何のための案件か / 関連ツールとスタック
- 最優先ルール(5 行以内): 判断に迷った時の優先順位 / 絶対にやらないこと
- 文体・トーン: 想定読者 / 口調(断言/丁寧/カジュアル)/ 禁止表現の例
- よく使うコマンド: コピペで動くコマンド例 / 注意事項
これだけで OK です。ご自身の会社情報を当てはめて、20 〜 30 分で初版が書けます。完璧を目指さず、運用しながら追記していく方が現実的。
初日に試してほしい確認方法
CLAUDE.md を保存したら、皆さんもまず Claude Code を再起動して「あなたが知っている私の会社のルールを 5 つ挙げて」と聞いてみてください。書いた内容が正しく読み込まれていれば、CLAUDE.md の内容が箇条書きで返ってきます。
違うことを言ってきたら、書き方が曖昧か、保存場所が違う可能性があります。初期セットアップの記事でファイル配置の確認方法も解説しているので参照ください。
シリーズ次回予告
CLAUDE.md でルールを宣言しても、AI がうっかり禁止コマンドを実行してしまう瞬間はゼロにはなりません。次回は settings.json で「物理的に実行不可能」な状態を作る方法、つまりルール違反を構造的に防ぐ仕組みを解説します。当社が過去にやらかした実例ベースで書きます。
シリーズ全体は「自分の会社専用の Claude Code を育てる 5 ステップ」として設計しています。そもそも導入判断の 3 軸で迷っている段階の方は、先にそちらをどうぞ。
CLAUDE.md の書き方についてよくある質問

CLAUDE.md は日本語で書いても問題ありませんか
問題なく動きます。Claude は日本語ネイティブと言える性能を持つため、英語で書く必要はありません。むしろ社内で共有・更新することを考えると、メンバー全員が読める日本語で書く方が運用が長続きします。当社の CLAUDE.md も全文日本語です。
1 つの会社で複数の CLAUDE.md を使い分けられますか
使い分けられます。プロジェクトごとに別々の CLAUDE.md を置く設計が標準で、当社も「KAIROS(記事生成)」「FORMA(Web 制作)」「SIGNAL(SNS レポート)」の 3 プロジェクトで、それぞれ別の CLAUDE.md を運用しています。共通部分は全社共通のグローバル CLAUDE.md に集約し、案件固有の話だけ各プロジェクトに書く構造です。
書いた内容が AI に効いているか、どう確認しますか
一番早いのは「あなたが私について知っていることを 5 つ挙げて」と聞くこと。CLAUDE.md の内容が箇条書きで返ってくれば成功です。返ってこない場合は、保存場所の間違いか、ファイル名のスペルミスが疑われます。CLAUDE.md(全部大文字 + .md)が正しい綴りです。
新人社員に CLAUDE.md の存在を説明する時、どう伝えれば伝わりますか
「会社の業務マニュアルを AI に読み聞かせるためのファイル」が一番伝わります。新入社員研修で配る業務手順書を、AI 用にテキストに起こしたもの、と説明すると、非エンジニアでも納得しやすい。実際の運用も、社員教育の延長線で考える方が自然です。
